【行政書士が解説】再婚・ステップファミリーのための自筆証書遺言の注意点

遺言書作成
目次

家族のカタチが多様化する時代に

近年、「再婚家庭」や「ステップファミリー(血のつながりのない家族)」が増えています。
内閣府の統計でも、婚姻件数のうち約4組に1組が再婚カップルといわれ、家族の形は確実に多様化しています。

けれども、相続の仕組みだけは、昔ながらの“血縁中心”のままです。
つまり、いくら「本当の家族」として暮らしていても、法律上の親子関係がなければ、子どもに相続権はありません。

この「法律と現実のズレ」こそが、再婚家庭での相続トラブルの火種となるのです。

そんな中で、想いを正確に伝えるための最も現実的な手段が自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)です。

よろしければ、前回の記事も併せてご覧ください。


自筆証書遺言とは?自分の手で書ける“法的な意思表示”

自筆証書遺言とは、本人が自分で全文・日付・氏名を手書きし、押印することで効力が生じる遺言書です(民法第968条)。

手軽に作成でき、費用もほとんどかからないため、「家庭の事情を静かに整えたい」方には最適の方法です。

▷自筆証書遺言のメリット

証人がいらず、自宅で作成可能

費用がほとんどかからない

内容を秘密にできる(他人に知られずに書ける)

2020年以降は法務局保管制度で安全に預けられる

ただし、メリットが大きい分、書き方のミスが命取りになります。

特に再婚家庭では、法律関係が複雑なため、慎重な記載が必要です。


再婚・ステップファミリーに特有の“相続の落とし穴”

① 血のつながりがない子どもには相続権がない

たとえば、再婚相手の連れ子と同居していても、養子縁組をしていなければ、その子には法定相続権がありません。

つまり、どれほど家族として生活していても、法律上は「他人」として扱われてしまうのです。

例)夫が再婚し、前妻の子と、現在の妻の連れ子がいる場合

→ 相続権があるのは夫の実子(前妻の子)だけ。連れ子(妻の子)には一切の相続権がありません。
遺言書がなければ、「仲良く暮らしていた家族」に財産を残すことはできません。だからこそ、再婚家庭では遺言書が不可欠なのです。


② 前婚の子どもとの“相続バランス”が争いの原因に

再婚相手との間に新しい家庭を築いても、前婚の子どもには依然として法定相続権があります。

たとえば、前妻との子と今の妻が相続人となる場合、遺産分割をめぐって感情的な対立が起きることがあります。

「父は今の妻にばかり遺産を残した」

「私たちは家族なのに、何ももらえないのか」

こうしたトラブルを防ぐためには、遺言書で明確に「誰に何をどのように残すのか」を書き、理由や想いも付言事項として添えることが大切です。


③ 同居していた妻・子が“家を失う”リスク

家の名義が亡くなった方の単独名義の場合、その家は相続財産となり、法定相続人の共有財産となります。

もし前婚の子どもと今の妻が相続人になった場合、「今の妻が住み続けたい」と思っても、他の相続人が売却を希望すれば、退去を迫られることもあり得ます。

遺言書で「自宅は妻に相続させる」と明記しておけば、このような問題を避けることができます。


自筆証書遺言で注意すべきポイント

  1. 「誰に何を相続させるか」を明確に

再婚家庭では「誰に何を残すか」を明確にしておかないと、思わぬ人に財産が渡ってしまうことがあります。

× 「家族にすべてを託す」→ 法律的には不明確で、争いのもと。

鹿児島市〇〇町の自宅不動産を妻〇〇〇〇に相続させる」→ 不動産・財産を特定して記載する。

また、「相続させる」と「遺贈する」の違いにも注意が必要です。
相続人に渡す場合は「相続させる」、相続人以外(連れ子など)に渡す場合は「遺贈する」と書きます。


  1. 遺留分を考慮しないとトラブルになる

前婚の子どもには「遺留分(いりゅうぶん)」と呼ばれる、最低限の取り分を主張できる権利があります。

たとえ「全財産を妻に」と書いても、子どもが遺留分侵害額請求をすれば、遺産の一部を取り戻せます。

したがって、感情だけで偏った遺言を書くと逆効果。
バランスを考え、相続人それぞれの立場に配慮した内容にすることが重要です。


  1. 付言事項で感情を伝える

遺言書の最後に、法的効力はないけれど、想いを伝える「付言事項(ふげんじこう)」を添えることができます。

たとえば、「前妻の子どもたちへ。長い間連絡を取れなかったことを悔いています。今の妻と連れ子を支えてくれたことに感謝しています。残した財産は感謝の気持ちとして受け取ってください。」

このような一文があるだけで、受け取る側の感情は大きく変わります。

争いを防ぐのは、法律の条文だけではなく、“心の言葉”なのです。


  1. 法務局の保管制度を活用する

2020年7月から始まった「自筆証書遺言書保管制度」は、法務局が本人の遺言書を正式に保管してくれる仕組みです。

保管手数料:1通3,900円

検認(家庭裁判所での手続き)が不要

死後、相続人が内容を確認できる

再婚家庭では、家族構成が複雑なため、遺言書の存在を「誰が知っているか」も重要になります。
法務局に預けておけば、確実に見つけてもらえるので安心です。


行政書士に相談するメリット

自筆証書遺言は、簡単に書ける反面、一言の違いで無効になることもあります。

特に再婚家庭の場合、相続人の範囲や遺留分、養子縁組の有無などが複雑です。

行政書士に相談することで、

有効な形式を確保しつつ、内容を法的に整える

各相続人の立場を踏まえた“争いの起きにくい文面”に仕上げる

遺言執行者として実務まで一貫サポートが可能

さらに、必要に応じて公証役場・法務局との手続きもサポートできるため、「書いて終わり」ではなく「実現まで見届ける」ことができます。


行政書士が見た現場から

【事例1】連れ子に財産を残せなかったケース

70代男性が再婚後、妻の連れ子と仲良く暮らしていたが、養子縁組をしていなかった。
遺言書もなかったため、相続人は前妻の子どものみ。
結果的に、長年一緒に暮らした連れ子には一切の財産が残らなかった。

→ 対策:生前に自筆証書遺言で「連れ子に遺贈する」と記載すれば実現できた。


【事例2】「感情的な遺言」で争いに発展

男性が「すべての財産を今の妻に」と書いたが、前妻の子どもが遺留分を請求。
遺産分割が長期化し、妻は疲弊してしまった。

→ 対策:法的に配慮した内容と感謝の付言を添えれば、円満解決の可能性が高かった。


まとめ:家族が増えた分だけ、“想い”を明文化する必要がある

再婚・ステップファミリーでは、法律上の家族関係が複雑になります。

その分、「書いておくべきこと」も増えるのです。

血縁に左右されない「本当の家族」へ財産を託す

前婚の子どもにも配慮し、争いを避ける

残された家族が困らないよう、責任をもって準備する

これらを実現できるのが、「自筆証書遺言」です。

遺言書は、あなたの人生の集大成。
再婚家庭だからこそ、言葉で“つながり”を残すことが、最大の思いやりです。

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