【行政書士が解説】手書きの遺言書が“無効”になる意外な理由とは?

遺言書作成
目次

「せっかく書いたのに無効?」という現実

「自分の気持ちをちゃんと残したい」「家族がもめないように遺言書を書いておこう」

そう思って一生懸命、手書きで遺言書を書かれる方はたくさんいます。

しかし、行政書士として多くの相談を受けていると、せっかく書いた遺言書が“無効”になってしまうケースが少なくありません。

たとえば、

・日付の書き方が曖昧だった

・財産目録をパソコンで作ってしまった

・押印を忘れた

・書き換えた部分の訂正方法が間違っていた

こうしたちょっとしたミスで、遺言書がまるごと無効になることがあるのです。

この記事では、行政書士として、「手書きの遺言書が無効になる意外な理由」と、失敗しないための正しい書き方・保管のコツを、わかりやすくお伝えします。

よろしければ、過去の記事も併せてご覧ください。


手書きの遺言書=「自筆証書遺言」ってどんなもの?

まず、手書きの遺言書は、法律上「自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)」と呼ばれます。
その名のとおり、全文・日付・氏名をすべて自筆で書く遺言書のことです。

令和2年からは、「財産目録」をパソコンなどで作成できるようになり、以前より作りやすくなりました。

ただし、形式のルールは今でも厳格で、一つでも欠けると無効になる点には注意が必要です。

遺言書の主な種類

  • 自筆証書遺言 … 自分で書く(費用がかからないが、形式ミスに注意)
  • 公正証書遺言 … 公証役場で作る(確実だが費用がかかる)

自筆証書遺言は、「自分で書けるから」と安易に手を出して、形式不備で無効になるケースがあります。


手書きの遺言書が“無効”になる意外な理由5選

ここでは、行政書士の現場で実際に見られる「よくある無効例」を、分かりやすく紹介します。


理由①:日付の書き方があいまい

たとえば、次のような書き方をしていませんか?

  • 「令和〇年吉日」
  • 「春ごろ」
  • 「2025年11月」

これらはすべて無効になる可能性があります。

法律上、日付は特定できるものでなければならないとされています。

「吉日」「○月」「秋ごろ」など、日が特定できない表現では、遺言がいつ書かれたのか証明できないためです。


正しい書き方の例

  • 「令和7年11月4日」
  • 西暦でもOK:「2025年11月4日」

たったこれだけの違いで、遺言書の有効・無効が変わります。


理由②:署名や押印を忘れている

意外に多いのが「署名忘れ」「押印忘れ」です。

遺言書の最後には、必ず自分の氏名を自筆で書き、印を押す必要があります。

ハンコは実印でなくても構いませんが、「本人の意思で作ったこと」を示す大切な証拠になります。

  • 署名はフルネームで
  • 認印でもOK(ただしシャチハタは避ける)
  • 押印場所は署名のすぐ下が基本

理由③:書き間違えた部分の訂正方法が不備

手書きの遺言書では、「書き直し」がトラブルのもとです。

たとえば、書き間違えた部分を二重線で消して書き直す・・・これは一見正しそうですが、訂正の仕方にもルールがあります。

正しい訂正方法(民法第968条)

  • 消した箇所の上に訂正内容を明記する
  • その近くに「○字削除、○字加筆」と記載
  • さらに訂正部分に署名押印をする

これを忘れると、その部分は訂正が無効になります。最悪の場合、遺言書全体が無効と判断されることも。


理由④:財産目録をパソコンで作ったが、署名・押印をしていない

令和2年の法改正で、財産目録(銀行口座一覧や不動産リストなど)は、パソコンで作ってもOKになりました。

しかし、「署名・押印」は各ページに必ず必要です。

つまり、財産目録が3ページあるなら、3ページすべてに自筆の署名と押印をする必要があります。

これを忘れると、財産目録の部分が無効となり、遺言の内容が不明確になる恐れがあります。


理由⑤:保管場所が分からず、見つからなかった

「せっかく書いたのに、家族が見つけられなかった」というケースも多くあります。

これは“形式不備”ではありませんが、実質的には無効と同じ結果になってしまいます。

  • 引き出しの奥にしまって忘れていた
  • 家族に伝えていなかった
  • 火災や水害で紛失した

このような事態を防ぐために、近年では「法務局の自筆証書遺言保管制度」を利用する方が増えています。


法務局の「自筆証書遺言保管制度」を活用しよう

令和2年からスタートした「自筆証書遺言保管制度」。

これは、法務局であなたの遺言書を安全に保管してくれる制度です。

制度のメリット

紛失・改ざんの心配がない

家族が遺言書の存在を確認できる

検認(家庭裁判所での手続き)が不要になる

手数料も1通3,900円とリーズナブル。

行政書士に内容をチェックしてもらい、完成した遺言書をこの制度で保管すれば、「確実に届く遺言書」になります。


実際にあった“無効になった”遺言トラブル事例

事例①:「吉日」と書いた遺言書が認められなかった

70代女性が手書きで遺言書を残していましたが、日付が「令和3年吉日」となっていたため、家庭裁判所で無効と判断されました。

その結果、法定相続通りに分配され、女性の意向は反映されませんでした。


事例②:財産目録をパソコンで作成、署名押印なし

不動産の一覧をエクセルでまとめて印刷し、手書きの遺言書に添付していたケース。

目録に署名・押印がなかったため、「財産の特定が不十分」として一部無効に。


教訓

遺言書は“内容の正しさ”だけでなく、“形式の正しさ”が重要。

形式を誤ると、本人の意思があっても法律的には無効になるのです。


無効にならないために、行政書士が教える5つのポイント

  1. 全文を自筆で書く(目録を除く)

    他人に代筆させると無効。ワープロやスマホで本文を書くのもNGです。
  1. 日付・署名・押印を忘れない

    日付は「年・月・日」を明記し、署名と印鑑を押す。
  1. 訂正は正式な手順で

    訂正部分に「○字削除・○字加筆」と記し、署名・押印を添える。
  1. 財産目録は各ページに署名押印

    パソコン作成でも、署名押印を忘れずに!
  1. 保管は法務局または専門家へ

    家庭内保管ではなく、法務局保管制度を利用すると安心です。

「公正証書遺言」も検討を

「どうしても形式を間違えたくない」「家族に確実に遺言を残したい」
そんな方には、公正証書遺言がおすすめです。

公証役場で公証人が内容を確認しながら作成するため、法的に無効になる心配がほとんどありません。

費用は数万円ほどかかりますが、

内容の確認

証人手配

公証役場とのやりとり

を行政書士がサポートできます。「確実に残したい」方にとっては、安心の方法です。


行政書士が伝えたい、“正しい遺言書”は「優しさの形」

行政書士として感じるのは、遺言書は法律の書類ではなく「優しさの形」だということです。

形式を守るのは大切ですが、その先にあるのは、「家族が困らないように」「自分の想いを伝えたい」という気持ち。

だからこそ、

無効にならないように丁寧に書く

専門家と一緒に確認する

きちんと保管して家族に伝える

この3つを意識することが、終活の第一歩になります。


まとめ:あなたの想いを「確実に残す」ために

せっかく心を込めて書いた遺言書も、形式を間違えれば法的には存在しないのと同じになってしまいます。

でも、ルールを理解し、正しい方法で作れば、それは“あなたの想いを未来へつなぐ力”になります。


最後にもう一度チェック!

手書きの遺言書を無効にしない5つのルール

チェック項目 注意点
日付を正確に書く「吉日」や「あいまいな表現」はNG
署名と押印を忘れないフルネームで署名、印鑑はシャチハタ以外
訂正は正式な手順で「○字削除・加筆」と記載し、押印
財産目録は各ページ署名押印パソコン作成でも必要
保管は法務局制度を利用紛失・改ざん防止に有効

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名古屋市緑区で活動する女性行政書士として、私は「書いて終わり」ではなく、“確実に届く遺言書づくり”をお手伝いしています。

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