【行政書士が解説】内縁関係(事実婚)のパートナーに相続権はある?

近年、「結婚という形にこだわらないパートナーシップ」を選ぶ方が増えています。
婚姻届を提出しない、いわゆる 内縁関係(事実婚)。
お互いを深く信頼し、長く生活を共にしていても、その法律上の扱いを正確に理解している方は、実は多くありません。
特に相続に関しては、

「長年一緒に暮らしていたのだから、当然相続できるのでは?」



「籍は入れていないけれど、妻(夫)と同じように扱われるはず」
と誤解されているケースが非常に多いのが現状です。
しかし
実は、内縁のパートナーには法律上の相続権はありません。
この事実を知らないことで、
住んでいる家を失ってしまう
想いを残せないまま突然の別れに直面する
親族とのトラブルに巻き込まれる
など、深刻な問題が起きることがあります。
この記事では、行政書士として相続相談に携わってきた経験を交えながら、
「なぜ内縁パートナーに相続権がないのか」「どうすれば大切な人を守れるのか」
を、できるだけわかりやすく、そして実務に即した形で解説します。
よろしければ、過去の記事も併せてご覧ください。


内縁関係(事実婚)とは? まずは法律上の位置づけから
内縁関係とは、
婚姻の意思を持って共同生活を営んでいるものの、婚姻届を提出していないため、法律婚としては認められていない関係
を指します。
特徴としては、
同居し、家計を共にしている
周囲(職場・友人・親族)にも夫婦として認識されている
長期間生活を共にしている
など、実態としては“夫婦と変わらない関係”が続いていることが前提です。
ただし、
婚姻届を提出していないため、法律上は夫婦として扱われない
という点が最も大きなポイントです。
この「法律婚ではない」という事実が、相続の世界では非常に重くのしかかります。
なぜ内縁パートナーには相続権がないのか
法律が定める“法定相続人”は、細かく決まっています。
配偶者・子・父母・兄弟姉妹など、血縁関係と法律婚に基づいて構成されています。
そのため、婚姻届を出さずに共同生活を送っているだけでは、法律上の配偶者とは認められません。
つまり、
どれだけ長い年月を共に過ごしても、
どれだけ深い信頼関係であっても、
そのままでは「相続人」として扱われないのです。
これは制度の不備というより、“婚姻届という形式を法的夫婦の基準としている”
日本の民法上、避けられない結論です。
実務でよくある “相続トラブル” の典型例
ここからは、実際の相談でもよく見聞きするケースをご紹介します。
● ケース1:自宅の名義がパートナーではない場合
内縁の夫が先に亡くなり、住んでいた家が夫名義だったとします。
妻同然に暮らしていても、内縁の妻には相続権がないため、その家は夫の子どもや親に相続されます。
その結果、
「出て行ってほしい」「家を売却する予定だから退去してほしい」
と求められることも珍しくありません。
突然住む場所を失う可能性すらあるのです。
● ケース2:生活費を共にしていたのに“一円も相続できない”
内縁期間中、生活費のほとんどを妻側が負担していた場合でも、「相続」としてお金を受け取ることはできません。
内縁パートナーに財産を残さないまま亡くなってしまうと、
長年支えてきた相手であっても何も受け取れない
という現実があります。
● ケース3:親族との関係が薄いほどトラブルが激しくなる
内縁関係を選ぶ方のなかには、
過去の離婚歴がある
親族と疎遠
子どもがいない
などの事情があるケースも少なくありません。
このような状況では、亡くなった後の財産に親族が関心を持ちやすく、内縁パートナーとの関係も理解してもらいにくくなります。
結果として、
「他人なのだから出ていってほしい」「財産を渡す理由がない」
といった対立が起きてしまうのです。
内縁パートナーを守るための唯一の方法
ここまで読むと、不安が強くなった方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、安心してください。
内縁関係であっても、きちんと備えておけば大切な人を守ることはできます。
その方法はただ一つ、
“遺言書を作成しておくこと”です。
遺言書がある場合、内縁パートナーにも財産を遺せる
相続権そのものは法律で定められていますが、遺言書に書かれたことは、原則として相続に優先します。
つまり、
遺言書で「財産をすべて内縁の妻へ渡す」と明記すれば、そのとおりに財産を渡すことができます。
特に、以下の財産は遺言で指定しておく必要があります。
自宅
預貯金
車・株式・保険金受取人
家具や家電など生活に必要な財産
内縁パートナーが、
「これまでの生活を続けられるようにする」
という意味で、遺言書は必要不可欠です。
ただし、遺留分(いりゅうぶん)には注意
遺言書で自由に財産を渡せるとはいえ、法律上、相続人には「遺留分」が認められています。
遺留分とは、
一定の相続人が最低限もらえる取り分
のことです。
遺留分を持つのは、
配偶者
子
父母(※兄弟姉妹にはない)
内縁関係のパートナーは遺留分を持ちませんが、
逆に言えば、
子どもや親がいると、その人たちが遺留分を請求する可能性がある
ということです。
実務では、遺留分を踏まえた遺言書作りが非常に重要になります。
遺言だけでは不安な場合は「死因贈与契約」も選択肢に
遺言書に加えて、内縁パートナーをより確実に守るために使われる制度として
死因贈与契約(しいんぞうよけいやく)
があります。
これは、「死亡したら財産を渡す」という契約を生前に結んでおく方法です。
遺言書と異なり、贈与契約として法的拘束力が強いため、
「遺言が無効になるリスクを避けたい」
「確実に渡したい財産がある」
というケースで有効です。
さらに安心したい場合は「公正証書遺言」がおすすめ
遺言書には大きく分けて3種類ありますが、
特に内縁関係の方におすすめなのは、
公正証書遺言
です。
理由は3つ。
1. 公証役場が作成するため、形式不備がない
2. 紛失・改ざん・破棄の心配がない(原本は公証役場で保管)
3. 家庭裁判所の検認が不要ですぐ使える
特に内縁関係の場合は、親族からの反対や遺言無効の争いが起きるリスクが高いため、「公正証書遺言」一択、と言ってよいほど重要です。
行政書士として伝えたい本音
相続の現場では、
「籍が入っていない」という一点が、大きな壁となることが多々あります。
何十年も支え合ってきたパートナーが、亡くなった瞬間に“他人”として扱われてしまう…。
その悔しさや悲しさを前に、相談の場で泣き崩れる方を何度も見てきました。
だからこそ、私はお伝えしたいのです。
→ 内縁関係だからこそ、相続の準備が必要です。
→ 遺言書ひとつで、大切な人の未来は守れます。
法制度に感情はありません。
けれど、準備をしておくことで、亡くなる方の想いも、残される方の生活も、きちんと守ることができます。
まとめ: 内縁パートナーに相続権はない。でも守る方法はある
ここまでの内容を改めて整理すると――
- 内縁関係(事実婚)には法定相続権がない
- どれだけ長く共に生活していても、法律婚と扱いは異なる
- 相続トラブルのリスクは法律婚以上に高い
- 内縁パートナーに財産を遺すには、遺言書(できれば公正証書) が必須
- 死因贈与契約を組み合わせれば、より確実
- 子や親がいる場合は「遺留分」に配慮が必要
相続は「準備していたかどうか」で結果が大きく変わります。
とくに内縁関係のご夫婦の場合は、早い段階で備えておくことが思いやりです。
不安がある方、
「うちのケースでは何をすればいいの?」という方は、
どうぞ一度ご相談ください。
女性行政書士として、あなたの大切なパートナーの未来を守るお手伝いをいたします。
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