【行政書士が解説】特別養子制度と相続の完全ガイド─実親との関係はどうなる? 相続権はどう変わる?

「特別養子制度」という言葉を耳にしたことがあっても、制度の内容や“相続との関係”まで正しく理解している方は、意外と少ないように感じます。
名古屋市で相談を受けていても、
「特別養子になったら、実親との相続はどうなるの?」
「普通養子と相続関係は同じじゃないの?」
「孫を特別養子にした場合、相続の扱いはどうなる?」
「もし親が亡くなったら、相続の権利はどこまで続くの?」
といった質問はとても多く寄せられます。
特別養子制度は、子どもの福祉を最優先にした制度として設計されているため、普通養子縁組とは大きく異なる点があり、その差は相続にも直接影響します。
本記事では、女性行政書士の立場から、できるだけ難しい法律用語を避けながら、特別養子制度と相続の関係をすっきり分かる形で解説していきます。
相続や家族の問題に悩む方にも、この記事が安心につながるヒントになれば幸いです。
そもそも「特別養子制度」とは?
まず押さえておきたいのは、特別養子制度は『家庭裁判所が認めた場合にしか成立しない縁組』であるという点です。
一般的な「普通養子縁組」は、市区町村へ届け出をすれば成立しますが、特別養子の場合はまったく違います。
特別養子制度の目的
- 実親との法律上の親子関係を完全に断つ
- 新しい親子関係を“実子と同じ”強さで作る
- 子どもの安定した養育環境を確保するため
つまり特別養子制度は、実子と同じように家庭で育つチャンスを子どもに与えることを目的とした制度です。
【特別養子制度の主な条件】
原則として 6歳未満の子(現在は一部例外で15歳未満まで可能)
家庭裁判所の審判が必要
養親となる夫婦が、子の福祉に十分な環境を持っていること
相当な事情がない限り、実親の同意が必要
そして、相続の分野で大きな影響を持つのが、
以下のポイントです。
特別養子は実親との法律上の親族関係が完全に消滅する
ここが、普通養子との最も大きな違いです。
●普通養子縁組
→ 実親(生みの親)との親族関係はそのまま残る
→ 養親とも新たに親子関係が生じる
→ 相続権は実親・養親の両方に発生
●特別養子縁組
→ 養親との間に「実子と同じ」親子関係が成立
→ 実親との法律上の親子関係は消滅
→ 相続権も完全に切れる
この違いは非常に大きいです。
つまり、特別養子になった子どもは、
- 実親が亡くなっても 相続権はない
- 実親の財産を相続することはできない
- 逆に、実親が介護費用を請求する権利や、扶養義務もなくなる
という“完全な法律的独立”が成立します。
この強い親子関係の断絶こそが、特別養子制度の大きな特徴なのです。
特別養子は養親の子として“実子と同じ相続権”を持つ
特別養子縁組が成立すると、養親の家庭においては、血のつながりがある子と全く同じ扱いになります。
相続分も、遺留分も、扶養義務も、すべて実子と同じです。
たとえば、
- 養親が亡くなれば、その子は 法定相続人(第1順位)
- 相続分は 実子とまったく同じ
- 養親の親族(祖父母など)との関係も発生する
つまり、法的には“実の親子”として扱われます。
特別養子縁組は「この子は私たち夫婦の実子です」と国が認めるのと同じ意味を持っています。
実務でよくある相談①:『孫を特別養子にした場合の相続は?』
名古屋市でも実際に多いのが、「祖父母が孫を特別養子にするケース」です。
たとえば、
娘(母親)が若くして離婚
孫の養育が難しく、祖父母が育てている
そのまま特別養子にしたいと考えている
このような状況は珍しくありません。
相続はどう変わる?
孫が特別養子になった場合、次のような変化が生まれます。
- 娘(実親)との法律上の親子関係が消滅
- 相続権も消滅
- 祖父母が亡くなったとき、孫は実子と同じ相続権を持つ
相続の観点で注意すべきポイントは、
特別養子縁組をすると、「孫」ではなく「子」になるということ。
その結果、祖父母の遺産分割において、
- 他の子(祖父母の実子)と同じ相続分
- 書類上も“子”として扱われる
という変化が生まれます。
家庭関係として自然な結果ではありますが、「本家の相続のバランス」が変わる可能性があるため、他の親族との調整が必要になる場合もあります。
実務でよくある相談②:『特別養子になった子に“実親側の遺産”を残したい場合』
特別養子は実親との法律関係が完全に切れますが、「どうしても実親の財産を特別養子に残したい」という相談もあります。
たとえば、
事情があって手放したけれど、
将来は自分の財産を少しでも遺してあげたい
長い時間をかけて関係が再構築された
実親側にしかない財産(家系の不動産など)がある
このようなケースです。
●方法は一つだけ
→ 遺言書で遺贈する
法定相続人ではなくなるため、「法律上の相続権」では受け取れません。
しかし、遺言書で「○○さんに財産の何割を贈る」と書けば、遺贈(いぞう)として財産を受け取ることができます。
相続ではなく“贈与に近い形”と考えると分かりやすいでしょう。
特別養子制度で起こりやすい“相続トラブル”と防ぎ方
特別養子制度自体は、子どもの福祉のためにとても良い制度ですが、相続の場面では思わぬ誤解が生じることがあります。
よくある誤解①
「特別養子でも実親の相続を受けられると思っていた」
→ 実親との関係は完全に切れます。
→ 遺産は一切相続できません。
よくある誤解②
「普通養子と同じ感覚で考えていた」
→ 普通養子は“実親と養親の両方から相続できる”
→ 特別養子は“養親のみ”です。
●よくある誤解③
「祖父母が勝手に特別養子にしたと思っている」
→ 家庭裁判所の審判が必要。
→ 実親の同意(拒否できる)も原則必要。
このような誤解が重なると、親族間の感情的な対立に発展することもあります。
トラブルを防ぐために、専門家として私が勧めていること
特別養子制度と相続の問題は、多くの場合、家族の事情や過去の出来事が深く関わっています。
相談を受けてきた経験から、私は以下の3つを特に意識してアドバイスしています。
① 情報を家族で丁寧に共有すること
相続は「知らなかった」がトラブルの始まりです。
- 特別養子であること
- 実親との関係が消えること
- 相続がどう変わるか
最低限、この3点は家族が理解していることが望ましいです。
② 遺言書の活用
特に必要なのは、
- 養親側の相続をスムーズにすすめたいとき
- 実親側が遺産を渡したいと考えるとき
- 親族間のバランスに配慮したいとき
遺言書は、誤解や不満を最小限にする最も有効な手段です。
③ 家庭裁判所の審判前に、専門家へ相談すること
特別養子制度は、相続だけでなく、
- 戸籍の変動
- 扶養義務の変更
- 家族関係の大きな組み換え
など、多岐にわたる影響があります。
「相続のことまで考えていなかった」というケースは本当に多いため、制度を利用する前に専門家へ相談することで、後々の不安やトラブルを大幅に減らすことができます。
名古屋市で特別養子制度と相続に悩んだら
特別養子制度と相続の関係は、“普通の相続”とも“普通の養子縁組”とも異なる独特のルールがあります。
- 実親との関係は完全に消滅する
- 養親の相続は実子と同じ
- 実親側の財産を渡すには遺言書が必須
- 親族間の相続バランスが大きく変わることもある
こうした特徴を踏まえたうえで、家族にとって最善の選択をすることが大切です。
名古屋市緑区では、再婚家庭・祖父母による養育・ひとり親家庭など、さまざまな事情を抱えた方が相談に来られます。
お話を伺うなかで感じるのは、「もっと早く相談に来れば良かった」という声がとても多いこと。
特別養子制度は子どもの未来に直結する大切な制度です。
相続の観点からも、早めの準備は必ず家族を守ります。
お困りの際は、どうぞ気軽にご相談ください。一緒に、これからのご家族に最適な道を考えていきましょう。