【行政書士が解説】養子縁組を利用した「節税」の誤解とリスク

「相続税を少しでも減らしたい」

「子どもが少ないので、養子を増やしたほうが節税になると聞いた」

名古屋市で相続相談を受けていると、こうした声をいただくことがあります。

特に近年はインターネットで“節税テクニック”が手軽に検索できるようになり、その中の一つとして 「養子縁組で相続税を減らす方法」 が広く知られるようになりました。

もちろん、養子縁組は法律上の制度であり、一定の条件のもと“相続税が軽減される効果”があるのは事実です。

しかし、私は専門家として

「節税目的の養子縁組には、非常に大きなリスクが潜んでいる」ことを繰り返しお伝えしています。

なぜなら、養子縁組は相続税の問題だけでなく、

親子関係の法的変更

親族間の感情的な対立

遺言との整合性

無効になる可能性

裁判や家庭不和につながるリスク

など、生活の根底を揺さぶる事態につながりかねないからです。

この記事では、行政書士としての経験を踏まえながら、「養子縁組=節税対策」という考え方のどこに誤解があるのか、そして、どんなリスクを抱えてしまうのかを、できるだけ丁寧にお伝えします。

相続対策は、表面上の数字ではなく、家族の気持ちと将来を見据えて行うことが何より大切です。

どうかこの文章が、後悔のない判断につながれば幸いです。

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目次

なぜ「養子縁組=節税」と言われるのか?

そもそも“なぜ養子縁組をすると節税になる”と言われているのでしょうか。

理由は次の2つにあります。

① 相続税の「基礎控除額」が増えるため

基礎控除額は、

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

で計算されます。

つまり相続人が1人増えれば、基礎控除が600万円増えるという仕組みです。

それゆえ「養子を増やせば節税になる」という発想が生まれました。

② 相続税の「税額控除(未成年控除など)」が使える場合がある

養子が未成年であれば、相続税に対し一定の控除が受けられる可能性があります。

しかし、このメリットだけが強調され、養子縁組の本質が軽視されてしまうことも少なくありません。


節税目的の養子縁組には制限がある

実は、相続税法には“節税目的の養子縁組を防ぐための制限”が存在します。

●法定相続人として数えられる養子の人数には「上限」がある

相続税の計算上、

実子がいる場合は1人まで

実子がいない場合は2人まで

これ以上養子を増やしても、相続税法上のメリットは発生しません。

つまり、「養子を3〜4人増やして相続税を大幅に減らす」というのは実務上ありえない話です。

そして、本当に怖いのはここからです。


節税だけの目的で養子縁組すると、無効になることがある

養子縁組は本来、「親子として互いに扶養し合う意思があるか」を基準に判断される制度です。

法律上は、

真実の親子関係を築く意思がない養子縁組は無効

とされています(民法802条)。


●無効になる可能性があるケースの例

  • 会ったこともない遠縁の親族を養子にした
  • 成年後見人の反対を押し切って節税のためだけに養子縁組をした
  • 被相続人本人が判断能力が弱くなっている時期に行われた養子縁組
  • 養子本人が「相続税対策という理由で頼まれた」と証言した場合

このような場合、相続発生後に「無効だ」と主張され、裁判になることがあります。

節税テクニックとして軽く考えるのは非常に危険です。


養子縁組は、相続税以外の問題がとても大きい

ここからが、実際の相談現場で最も多い部分です。

「節税したい」という理由だけで養子縁組をすると、相続税の金額以上に大きな問題が起こります。


① 実子との関係が悪化しやすい

よくあるのが、

「親が勝手に養子を作って遺産を減らした」と実子が不満を抱く

というケース。

相続は感情の問題です。

“数字上の分配”より、

「なぜそうしたのか」「自分はどう思われているのか」に人は揺れます。

養子縁組後の関係悪化は本当に多いです。


② 遺産分割の話し合いが複雑になる

養子を増やすことは、法定相続人を増やすことと同義です。

つまり、

  • 相続人の人数が増える
  • 話し合いの参加者が増える
  • 話し合いの参加者が増える

という状況になります。

特に赤の他人に近い関係の養子が相続に入ってくると、遺産分割協議は難航しがちです。


③ 実子・養子双方に精神的負担が生まれる

「節税のために養子にした」という背景が見えてしまうと、

  • 養子にされた側はプレッシャーを感じる
  • 実子は疎外感や不満を抱く
  • 親族間の関係全体がぎくしゃくする

という状態が生まれます。

お金では割り切れない人間関係のひずみが、後々まで尾を引いてしまうのです。


④ 遺留分争いが起きやすくなる

養子を増やすことで、

  • 実子の取り分が減る
  • 養子の取り分が増える

という現象が生じます。

当然、実子は「遺留分侵害だ」と主張する可能性が高くなります。

結果として争いが激しくなり、節税したかっただけのはずが、家族が法廷で争う状況に発展することもあります。


節税を考えるなら、まず“別の方法”を検討するべき理由

養子縁組以外にも、相続税を抑える方法は多く存在します。

  • 生前贈与(暦年課税・相続時精算課税の使い分け)
  • 教育資金の贈与控除
  • 住宅取得贈与
  • 生命保険の非課税枠活用
  • 不動産の活用
  • 遺言書での分配調整
  • 家族信託
  • 法人化(事業主の場合)

これらは“家族関係を変えずに”できる対策です。

節税だけを目的に大きなリスクを伴う養子縁組を選ぶ必要は、実務上、ほとんどありません。


まとめ:節税は「数字」ではなく「家族」を守るために行う

養子縁組は素晴らしい制度です。

しかし、節税目的だけで行うべき制度ではありません。

無効になるリスク

家族関係の悪化

遺産分割の複雑化

心の負担

想像以上に節税効果が小さいことも多い

こうした実務の現実を、ご家族は知っておく必要があります。

私は女性行政書士として、多くのご家族の相談を受けてきました。

そのなかで感じるのは、本当に大切なのは“財産”よりも“関係”だということ。

相続の準備は、家族の未来を守るために行うものです。

もし「節税のための養子縁組」を検討しているなら、どうか一度立ち止まり、専門家へ気軽に相談してください。

ご家族の状況に合わせ、より安全で、より安心な選択を一緒に考えていければと思います。


名古屋市緑区で相続相談ならけいか行政書士事務所へ

けいか行政書士事務所では、遺言書の作成支援・相続人調査・相続手続き代行など、相続に関するご相談を幅広く承っております。

家族の気持ちや背景に寄り添えるのは、女性行政書士ならではの強みだと思っています。

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