【行政書士が解説】祖父母が孫を養子にする「孫養子」の相続ルール


孫を養子にすると相続税が安くなるらしい



うちの孫は跡取りだから、将来を考えて養子にしたほうがいいのでは?



祖父母と孫は仲がよいし、そのままのほうが自然では?
名古屋市で行政書士として相続のご相談を受けていると、こうした“孫養子”にまつわるご質問をいただきます。
少子化が進み、家族のかたちが大きく変わるなかで、祖父母と孫の距離が近い家庭も少なくありません。
しかし、
「孫養子」はメリットだけでなく、誤解されやすい“リスク”も多い制度
であることは、あまり知られていません。
孫を思って行ったはずの養子縁組が、相続の場面ではかえってトラブルを招くこともあります。
この記事では、法律・相続税・家族関係の3つの観点から、孫養子の相続ルールを本音で、そして専門家として分かりやすく解説します。
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そもそも「孫養子」とは? ― 祖父母が孫を養子にする制度
まず、基本から整理しましょう。
「孫養子」とは、
祖父母が、実の孫を“養子縁組”すること
を指します。
戸籍上は、
祖父母:養親
孫:養子
となり、本来の親子関係(子→親→祖父母)とは別に、“もうひとつの親子関係”がつくられるのがポイントです。
孫は、実の親と祖父母の両方の子として扱われるため、法律上の血縁のつながりが2本できるイメージです。
孫養子になると相続はどう変わる? ― 実子と同じ法定相続分に
孫が養子になると、法律上は「祖父母の子ども(実子)」になります。
よって、
- 孫は“祖父母の法定相続人”になる
- 相続割合も実子と同じ(1人あたり均等)
となります。
具体例で見てみましょう。
例:子が2人 → そのうちの1人の子(孫)を養子にした場合
祖父母が亡くなったときの相続人は:
実子A
実子B
孫(養子)C
の 3人 になります。
つまり、
本来2人で分けるはずだった遺産を、3人で分けることになる
ということです。
この仕組みが後ほどお伝えする、トラブルの火種になる場合があります。
相続税では“1人”として数えられ、節税につながることがある
家庭によっては、孫養子は相続税の面でメリットが出ることがあります。
相続税の基礎控除は、
3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
で計算されます。
法定相続人の数が増えれば、控除額が増えるため、課税される金額が減る仕組みです。
孫養子は、実子と同じ「1人」として数えられるため、
- 課税対象額が減る
- 相続税を節税できる可能性がある
というわけです。
ただし、後で解説するように、節税目的だけで養子縁組をしてしまうと税務署に否認されるリスクもあります。
孫養子が増えている背景 ― 「家督」「跡取り」だけではない理由
以前は「跡取り問題」が主な理由でしたが、近年は次のような家庭事情が増えています。
① 子が遠方に住んでいて、孫が祖父母の面倒を見ている
→「生活を支えてくれた孫に財産を残したい」
② 子よりも孫との関係が良い
→「親子よりも孫と暮らしてきた」という家庭も増加
③ 実子が経済的に安定しており、孫に支援したい
→「孫に教育資金や将来の備えを残したい」
④ 孫の両親が離婚・別居・死亡
→「祖父母が孫を引き取って育てている」ケース
こうした理由から、家族の“自然な事情”の中で孫養子が選ばれる場面が増えています。
しかし、その一方で、孫養子には“必ず”押さえておくべきリスクがあることを忘れてはいけません。
5|孫養子の3大リスク ― 家庭トラブル・税務・法的な落とし穴
ここでは、行政書士としてご相談を受けてきた中でも、特に注意が必要なポイントをお伝えします。
① 実子の相続分が減るため、家族関係が悪化する
先ほどの例のように、
実子2人+孫1人(養子)になると、相続人は3人。
つまり、
実子それぞれの相続分は減るということになります。
これは、実子の不公平感につながりやすく、トラブルの元となります。
なかには、
- 孫だけ優遇された
- 祖父母が判断能力の弱った時期に養子縁組したのでは?
- おばあちゃんに誰かが圧力をかけたのでは?
…といった疑念から始まり、最悪、法的な争いに発展することもあります。
② 節税目的だと税務署に否認される場合がある
相続税では、
「節税目的の養子縁組」
と判断されると、次のように扱われることがあります。
実子がいる場合、基礎控除に算入できる養子は1人までです。
孫養子を複数つくった場合でも、税務署が「これは節税目的」と考えれば、控除の人数に含めてもらえない可能性があります。
また、被相続人(祖父母)が高齢で、判断能力が弱っていた時期の養子縁組は特に疑われやすい点も注意が必要です。
③ 実子が亡くなっている場合、相続関係が複雑化する
例えば、祖父母の実の子(孫の親)が亡くなっている場合、その孫は本来「代襲相続人」として祖父母の遺産を受け取れます。
しかし養子縁組してしまうと、誰の相続で、どれだけ相続するのか
が二重構造になるため、専門家でないと判断が難しくなります。
孫養子に向いている家庭・向かない家庭
行政書士として多数の相談を受けてきて分かるのは…
孫養子は「誰にでも向く制度ではない」ということ。
ここでは、実務経験にもとづく“向き・不向き”をまとめます。
◎【孫養子に向いているケース】
- 孫が実際に祖父母と生活している
- 実子が遠方で、真剣に「祖父母の跡取り」を希望している
- 孫が祖父母の介護やサポートを担っている
- 実子も孫養子に同意している
- 家族間で将来の話し合いが十分できている
✕【孫養子に向かないケース】
- 実子との関係が悪い
- 実子が経済的に困っており、嫉妬や不満を抱きやすい
- 祖父母が高齢で判断能力が低下している
- 「節税目的」が最優先になっている家庭
- 家族で相続の話ができていない家庭
孫養子をする前に必ず確認したい3つの準備
① 家族でしっかり話し合う
これが最重要です。
トラブルの9割は「聞いていなかった」が原因。
② 祖父母の判断能力(意思能力)を確認する
認知症が進んでいると養子縁組が無効になる可能性があります。
③ 専門家のチェックを入れる
家族の事情を踏まえて、
- 養子縁組
- 遺言書
- 生前贈与
- 家族信託
どれが最適かを判断する必要があります。
孫養子を選ばない場合の代わりの方法
もし孫養子が難しい場合は、次の方法で代替できます。
① 遺言書で孫に財産を渡す
最も確実。
遺留分に注意しながら、孫へ確実に財産を遺せます。
② 家族信託で資産の承継先を指定
「配偶者 → 孫 → その次の代」という順番を自由に設計できます。
③ 生前贈与
教育資金・住宅資金など、孫への支援がしやすい仕組みがあります。
孫養子は、愛情と愛情と法律のバランスが大切
孫を想っての養子縁組は、とても温かい決断です。
しかし、法律や税金の仕組みは、家族の気持ちとは別に動きます。
だからこそ、
感情だけで決めず、“法律上の影響”もしっかり理解した上で選ぶことが大切です。
孫養子は、成功すれば家庭の絆をさらに強くする制度ですが、誤解のまま進めてしまうと、実子と孫、家族の関係にひずみを生む危険もあります。
相続は「家族の問題」であり、だからこそ丁寧な対話が求められます。
名古屋市で行政書士として相続に携わる立場から、孫養子を検討される際は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。
まとめ ― 孫養子は強い効果を持つが、慎重に選ぶべき制度
最後にポイントを整理します。
【孫養子のポイントまとめ】
- 孫養子になると、孫は祖父母の“実子と同じ相続権”を持つ
- 相続税の負担が減る可能性がある
- ただし、節税目的と疑われると否認される
- 実子の相続分が減るため、家庭トラブルの原因になりやすい
- 養子縁組のタイミング・祖父母の意思能力が重要
- 家族での話し合い+専門家のサポートが不可欠
- 代替として「遺言書」「家族信託」も有効
名古屋市緑区で相続の相談ならけいか行政書士事務所へ
けいか行政書士事務所では、遺言書の作成支援・相続人調査・相続手続き代行など、相続に関するご相談を幅広く承っております。
家族の気持ちや背景に寄り添えるのは、女性行政書士ならではの強みだと思っています。
感情の整理がつかないときも、安心してお話いただけるよう丁寧にサポートいたします。初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。



