【行政書士が解説】相続の基本は“順番”で決まる─法定相続人の考え方
人が亡くなると、法律的には「相続」が開始します。
しかし、相続の手続きを進めるうえで最初の壁になるのが、「そもそも誰が相続人なのか」という点です。
相続は、お金持ちの家の特別な手続きと思われがちですが、実際は、家族の誰にでも起こりうる 人生のごく日常的な出来事 です。
そして相続の根幹を支えているのが、民法に定められた 法定相続人の順番 です。
日常生活の中ではあまり意識しない「家族の法律上のつながり」ですが、この順番を正しく理解しておくと、相続に振り回されるリスクが大幅に減ります。
この記事では、相続の初心者の方にも伝わるように、そして実務に日々触れる行政書士としての視点からも丁寧に、
「相続人の順位の考え方」をわかりやすくまとめます。
名古屋市やその近郊で実際によくいただく相談事例を踏まえながら、「揉めない相続」のための基礎知識としてご活用ください。
よろしければ、前回の記事も併せてご覧ください。
相続の第一歩は相続人の確定から始まる
相続手続きは、財産の金額や内容にかかわらず、必ず「相続人は誰か？」を確定する作業からスタートします。
なぜなら、
遺産分割協議に参加できる人
相続放棄できる人
預貯金の払い戻しに署名が必要な人
不動産の相続登記ができる人
これらすべてが「法定相続人」によって決まるからです。
ただし、この「相続人」というのは、“家族と思っている人全員”ではありません。
民法で定められた順番 に基づき、相続に参加できる人が決まります。
まず、この順位の仕組みを理解することが、相続のもっとも基本的なルールです。
法定相続人は順位で決まる─3つの階層を覚える
民法では、法定相続人を次のように“順位”で整理しています。
【第1順位】 子ども（亡くなった方の直系卑属）
実子
養子
認知された子
一番強い権利を持つのが 子ども です。
子どもが相続人にいる場合、第2順位・第3順位の人は出番がありません。
たとえば、
長男・次男がいる
婚姻外で認知された子がいる
生まれたばかりの未成年の子がいる
こうしたケースでは、親や兄弟よりも先に、必ず子どもが相続します。
また、子どもが先に亡くなっている場合には、孫が代襲相続として相続人になります。
【第2順位】 父母（直系尊属）
被相続人に子どもがいない場合、次に相続人となるのは 父母 です。
父母のどちらかが亡くなっている場合は、生きている方だけが相続します。
さらに、父母もすでに亡くなっている場合は、
祖父母
ひい祖父母
など、上の世代へとさかのぼっていきます。
「ずっと会っていなかった祖父母に相続権がある」
という状況も決して珍しくありません。
【第3順位】 兄弟姉妹
子どもがいない
父母（直系尊属）が全員亡くなっている
この条件がそろったときに初めて、兄弟姉妹に相続権が発生します。
ここで注意したいのが、兄弟姉妹にも 代襲相続がある という点です。
つまり、兄弟姉妹が亡くなっている場合には、その子ども（甥や姪）が代わりに相続人になります。
ただし、兄弟姉妹の代襲相続は“1世代限り”です。
甥姪が亡くなっていても、その子ども（さらに下の世代）には相続が及びません。
配偶者は常に相続人─ただし順位はない
相続人の順位で誤解が多いのが、配偶者の扱いです。
配偶者は順位とは関係なく、常に相続人になります。
配偶者とは、法律上の婚姻をしている夫または妻。
（内縁関係のパートナーは残念ながら相続人になれません。）
ただし、配偶者が相続する割合は、誰と一緒に相続するかによって変わります。
【配偶者と子が相続人のとき】
配偶者：1/2
子ども全体で：1/2
もっともよくある分配パターンです。
【配偶者と父母が相続人のとき】
配偶者：2/3
父母全体で：1/3
父母が相続人になるケースは、30代・40代の早すぎる相続でよく発生します。
【配偶者と兄弟姉妹が相続人のとき】
配偶者：3/4
兄弟姉妹全体で：1/4
兄弟姉妹に相続が生じるケースは比較的少ないですが、遠方のきょうだいと連絡がつかず遺産分割協議が進まないというご相談は少なくありません。
実務でよくある相続の勘違いとそのリスク
名古屋市の事務所へ寄せられるご相談でも、法定相続人の順位を誤解していたためにトラブル寸前になったケースは多くあります。代表的な例をご紹介します。
①「内縁の妻（夫）にも相続権があると思っていた」
内縁関係は、法律上の相続権がありません。
事実婚であっても、婚姻届を出していなければ、相続人にはなれないのです。
そのため、
- 自宅に住めなくなる
- 預貯金が全く動かせない
- 故人の子どもと揉める
といったトラブルが起きやすい状況です。
②「相続人は妻と子だけだと思ったら、実は“認知された子”がいた」
認知された子には、法律的に“実子と同じ相続権”が認められます。
- 婚姻外の子
- 過去の関係で認知した子
などがいる場合、相続の場で突然関係者として登場することもあり、家族の想定を大きく超えるケースが多いのが現実です。
③「兄弟だから当然に相続できると思っていた」
兄弟姉妹が相続できるのは、子どもがいない＆両親（祖父母など直系尊属）もいない場合のみ。
順位を知らず、実務を進めようとして初めて「自分には相続権がない」と気づく方もいます。
順位を理解すると相続トラブルの予防につながる
法定相続人の順位は、ただの知識ではありません。
実務ではこの順位を理解しておくだけで、
- 遺産分割協議がスムーズに進む
- 思わぬ相続人の出現を防げる
- 生前の準備（遺言書作成）が適切にできる
- 家族同士の誤解や感情的な衝突を回避できる
こうしたメリットがあります。
相続の問題の多くは、「誰が相続人なのか」についての思い込みから生まれます。
家族の状況が複雑なほど、この順番を冷静に確認する作業が大切です。
法定相続人を確定するために必要な資料とは？
実務では、相続人を確定するために必ず次の書類を集めます。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍
- 相続人全員の戸籍
- 除籍されている親族の戸籍（代襲相続の確認）
戸籍は思った以上に複雑で、
改製や転籍が多い
呼び出しに時間がかかる
内容の読み取りが難しい
といった点から、行政書士など専門家に依頼される方も少なくありません。
順位どおりにいかない相続に備える方法
法定相続人の順位は法律によって厳密に決まっていますが、遺言書がある場合は、遺言の内容が優先されます。
たとえば、
長男にすべてを相続させたい
配偶者に自宅を残したい
兄弟にお世話になったので財産を渡したい
といった希望がある場合、遺言書がなければ法律の順位どおりに分配されてしまいます。
相続の順番を理解することで、「自分の望む相続」を実現するための生前対策も明確になります。
まとめ─順番を知らない相続は必ず混乱する
相続の基本は「お金」でも「不動産」でもなく、誰が相続人かという順番の理解 です。
第1順位：子ども
第2順位：父母（直系尊属）
第3順位：兄弟姉妹
配偶者は常に相続人
この仕組みが分かるだけでも、相続手続きの全体像が一気に明確になります。
相続は、家族の歴史や人間関係がそのまま反映されるデリケートな手続きです。
だからこそ、できるだけ早い段階で「正しい知識」を持っておくことが、トラブルを避ける最大のポイントになります。
相続に関する不安や「うちはどうなるの？」という素朴な疑問があれば、女性ならではの視点で丁寧にサポートいたします。どうぞお気軽にご相談ください。
名古屋市緑区の相続相談はけいか行政書士事務所へ
けいか行政書士事務所では、遺言書の作成支援・相続人調査・相続手続き代行など、相続に関するご相談を幅広く承っております。
家族の気持ちや背景に寄り添えるのは、女性行政書士ならではの強みだと思っています。
感情の整理がつかないときも、安心してお話いただけるよう丁寧にサポートいたします。初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。
