【行政書士が解説】公正証書遺言って何?自筆証書遺言との「決定的な違い」

「遺言書って、やっぱり書いたほうがいいんでしょうか?」
相続のご相談に乗っていると、こうした質問を本当によくいただきます。そして続いて多いのが、

自分で書く遺言と、公正証書の遺言って何が違うんですか?

費用がかかるって聞いたんですが、本当に必要なんでしょうか?
という疑問です。
遺言書には大きく分けて「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類がありますが、この2つは見た目以上に中身が違います。
そしてこの違いを正しく知っておかないと、「ちゃんと遺言を書いたのに、相続でもめてしまった」という残念な結果になることも少なくありません。
今回は、行政書士としての実務経験をもとに、公正証書遺言とは何か?自筆証書遺言との決定的な違いは何なのか?を、専門用語をなるべく使わず、わかりやすくお伝えします。
そもそも遺言書にはどんな種類があるの?
まず大前提として、日本の法律で認められている遺言書にはいくつか種類がありますが、一般の方が使うのは主に次の2つです。
自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)
公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)
どちらも「法的に効力のある遺言」ですが、作り方・安全性・確実性・相続後の手続きのしやすさが大きく異なります。
自筆証書遺言とは?メリットと落とし穴
自筆証書遺言とは、その名のとおり、本人が全文を手書きで作成する遺言書です。
- 紙とペンがあればすぐ書ける
- 費用がほとんどかからない
- 誰にも知られずに作れる
という点が、多くの方に選ばれている理由です。最近では法務局での保管制度も始まり、「少し安心になった」という声も増えています。
ところが、実務の現場では「せっかく書いたのに無効だった」というケースも多く見られます。
自筆証書遺言が無効になる典型例は次のようなものです。
- 日付が書かれていない、または「〇年〇月吉日」など曖昧な記載
- 氏名がフルネームではない
- 財産の書き方が不正確で、どの不動産・預金なのか特定できない
- パソコンで作成してしまった
- 内容があいまいで、相続人同士で解釈が分かれる
法的な形式を一つでも欠くと、自筆証書遺言は簡単に無効になります。
さらに、法務局に預けていない場合は、
- 見つからない
- 捨てられてしまう
- 書き換えられるリスク
といった「存在そのものが危うい」という問題も抱えています。
公正証書遺言とは?もっとも安全性の高い遺言
公正証書遺言とは、公証役場で、公証人が作成する遺言書のことです。
本人が公証人に遺言の内容を伝え、それをもとに法律の専門家である公証人が、法的に絶対に無効にならない形で文章を作成します。
作成時には、証人2人の立ち会いも必要です。
完成した遺言書の原本は公証役場に厳重に保管されるため、
- 紛失しない
- 改ざんされない
- 相続発生後も確実に見つかる
という極めて高い安全性が確保されています。
公正証書遺言と自筆証書遺言の「決定的な違い」
ここからが本題です。
この2つの遺言の違いを、特に重要なポイントに絞って比較します。
① 無効になるリスクの違い【最大の決定的ポイント】
自筆証書遺言:無効になるリスクが常にある
公正証書遺言:形式不備による無効はほぼゼロ
公正証書遺言は、公証人が法律に基づいて作成するため、形式ミスで無効になることは原則ありません。
一方の自筆証書遺言は、たった一つの書き間違い・書き忘れで、「最初からなかったこと」になってしまいます。
② 相続開始後の手続きの違い(検認の有無)
自筆証書遺言:家庭裁判所での検認が必要
公正証書遺言:家庭裁判所での検認が不要
自筆証書遺言の場合、相続が始まると家庭裁判所での「検認」手続きが必要になります。
この検認には時間も手間もかかり、相続人全員に通知が送られるため、心理的な負担も決して小さくありません。
一方、公正証書遺言は検認不要です。
相続が起きたらすぐに、
- 不動産の名義変更
- 預貯金の解約
- 株式や保険の手続き
といった実務をスムーズに進めることができます。
③ 紛失・改ざんのリスクの違い
自筆証書遺言:家の引き出し、金庫、仏壇などに保管 → 紛失・改ざんのリスクあり
公正証書遺言:原本は公証役場で一生保管 → 紛失・改ざんの心配なし
「どこにしまったかわからない」
「相続人が見つけられない」
「一部だけ不自然に破れている」
こうしたトラブルは、残念ながら自筆証書遺言では実際に起きています。
④ 内容の“法的な確実性”の違い
自筆証書遺言:相続人同士で解釈が分かれる場合がある
公正証書遺言:公証人がチェックするため解釈が分かれる恐れがない
自筆証書遺言では、書いた本人は「このつもり」で書いていた、でも相続人同士で解釈が分かれる、ということが起こります。
その結果、遺言が原因でかえって相続争いが深刻化するケースもあります。
公正証書遺言では、公証人が一つひとつの表現を法律的に整理するため、「争いにくい文章」になるのが大きな特徴です。
費用の違いはどれくらい?
自筆証書遺言は、基本的にほぼ無料で作れます。
一方、公正証書遺言には数万円〜十数万円程度の費用がかかります。
ただし、これは「安心と確実性のための費用」とも言えます。
- 相続トラブルで裁判になる
- 兄弟姉妹で何年も争う
- 弁護士費用がかかる
こうしたリスクを考えると、公正証書遺言の費用は“保険”のようなものと感じられる方も多いのが実情です。
どんな人が公正証書遺言を選ぶべき?
次のような方は、特に公正証書遺言をおすすめできるタイプです。
- 不動産を持っている方
- 再婚している方、前妻・前夫との間にお子さんがいる方
- おひとりさま、子どもがいない方
- 内縁の配偶者に財産を残したい方
- 相続人同士の関係にすでに不安がある方
- 「絶対にもめさせたくない」と強く思っている方
これらのケースでは、自筆証書遺言だけではトラブルを防ぎきれないことが多いのです。
自筆か、公正証書か。迷ったときの考え方
「簡単に作りたいから自筆証書」「安全を最優先したいから公正証書」
この考え方はとても自然です。
ただ、私がご相談を受ける中で感じるのは、迷ったら公正証書遺言を選んだ方が後悔が少ない、ということです。
遺言は、ご本人が亡くなったあとに効力が発生します。
そのとき、書き直しは一切できません。
だからこそ、
本当にこの内容でよいか
法律的に問題はないか
将来、争いの火種にならないか
を、専門家と一緒に確認しながら作れる公正証書遺言には、大きな意味があるのです。
まとめ:遺言は「書いたかどうか」より「どう書いたか」
- 自筆証書遺言は手軽だが、無効・紛失・争いのリスクがある
- 公正証書遺言は費用はかかるが、最も安全で確実な遺言
- 「家族をもめさせない遺言」を本気で考えるなら、公正証書遺言が有力な選択肢
遺言は、単なる「書類」ではありません。
それは、大切な人へ最後に遺す“あなたの意思”そのものです。
もし今、
- 少しでも相続が不安
- 家族関係が複雑
- もめてほしくないという気持ちが強い
そんな想いが少しでもあるなら、一度、公正証書遺言という選択肢を真剣に考えてみてください。
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