【行政書士が解説】公正証書遺言はなぜ無効になりにくいのか─相続の現場から見えてくる「確実性」

「遺言書って、せっかく作っても無効になることがあると聞いて不安で…」
相続のご相談をお受けしていると、こうしたお声をよく耳にします。
実際、自筆で作成した遺言書が“無効”と判断されてしまい、結局、相続でもめてしまったというケースは、決して珍しくありません。一方で、公正証書遺言が無効になるケースは、実務では稀です。
ではなぜ、公正証書遺言はこれほどまでに「無効になりにくい」のでしょうか。
今回は、行政書士として日々相続の現場に向き合っている立場から、その理由を法律・手続き・実務の3つの視点で、わかりやすく解説します。
「遺言が無効になる」とはどういうこと?
まず前提として、遺言が「無効」となるとは、法律上、最初から存在しなかったものとして扱われてしまう状態を指します。
遺言が無効になると、
- 遺言の内容は一切反映されない
- 相続人全員による「遺産分割協議」が必要になる
- 意見がまとまらなければ、調停・裁判へ発展
という流れになり、「もめないために書いたはずの遺言」が、逆にもめごとの火種になるという、本末転倒な結果になることも少なくありません。
自筆証書遺言が無効になりやすい理由
公正証書遺言がなぜ強いのかを理解するために、まずは自筆証書遺言が「なぜ無効になりやすいのか」を見ていきましょう。
① 形式不備による無効が非常に多い
自筆証書遺言には、法律で厳格なルールが決められています。
- 全文を本人が手書きしていること
- 日付が特定できること
- 氏名の記載があること
- 押印があること
このうち一つでも欠けると、遺言は無効です。
例えば実務では、
- 「令和〇年〇月吉日」と書いてあった
- 名前だけで姓がなかった
- 財産一覧をパソコンで作成していた
といった、ご本人に悪気のないミスで、遺言全体が無効になるケースを見てきました。
② 内容があいまいで“解釈トラブル”になる
たとえ形式が整っていても、
「長男に家を任せる」
「財産はみんなで仲良く分けなさい」
といった表現があいまいな遺言は、相続人同士の解釈が分かれ、結果的に争いになります。
このような場合、裁判で「この遺言の意味は何だったのか」が争われ、事実上、遺言が骨抜きになることも少なくありません。
③ 偽造・改ざん・隠匿のリスクがある
自筆証書遺言は自宅で保管されることが多く、
- 故意に隠される
- 一部を書き換えられる
- そもそも見つからない
というリスクが常について回ります。
この「存在の不確かさ」自体が、公正証書遺言との大きな違いです。
公正証書遺言が無効になりにくい最大の理由
では、なぜ公正証書遺言は無効になりにくいのでしょうか。
その理由は、作成から保管までのすべてが「法律の専門家の管理下」に置かれているからです。
ここから、具体的に見ていきましょう。
理由① 公証人が「法律に絶対に適合する形」で作成するから
公正証書遺言は、公証人という国家資格を持つ法律の専門家が作成します。
公証人は、
元裁判官
元検察官
元法務局幹部
など、長年にわたって法律実務に携わってきた人物が任命されます。
その公証人が、
- 遺言の文言に法的な問題がないか
- 無効にならない形式か
- 将来、解釈トラブルにならない表現か
を一つひとつ確認しながら文章を作成します。
つまり、公正証書遺言は、最初から「無効にならない設計」で作られている遺言なのです。
理由② 本人の「遺言能力」が厳密に確認されるから
遺言は、本人に判断能力(遺言能力)がなければ、無効になります。
自筆証書遺言の場合、あとから、
「認知症が始まっていたのではないか」「判断能力が十分でなかったのではないか」
と争われ、遺言能力が否定されて無効になるケースもあります。
一方、公正証書遺言では、公証人が対面で本人と直接会い、
- 会話が成り立つか
- 内容を理解しているか
- 自分の意思で話しているか
を厳しく確認します。
このチェックを通過しなければ、そもそも公正証書遺言は作成できません。
このため、あとから「判断能力がなかった」という理由で無効になる可能性は極めて低いのです。
理由③ 証人2人が立ち会うことで「不正」が起きにくい
公正証書遺言の作成には、必ず証人2人の立ち会いが必要です。
これにより、
- 誰かに無理やり書かされた
- 内容を知らされないままサインさせられた
といった不正行為が入り込む余地がほぼなくなります。
証人は、内容に直接関与しない第三者であり、「本人の自由な意思に基づいて作成された」という事実を、法的に裏付ける役割を果たします。
理由④ 原本が公証役場に保管されるから
自筆証書遺言最大の弱点は、「保管」です。
一方、公正証書遺言は、
原本:公証役場
正本・謄本:本人・相続人
という形で、厳重に管理されます。
- 紛失しない
- 破棄されない
- 書き換えられない
という点も、無効になりにくい大きな理由です。
理由⑤ 家庭裁判所の「検認」が不要だから
自筆証書遺言の場合、相続が開始すると、家庭裁判所で「検認」という手続きが必要です。
この検認の過程で、
- 偽造ではないか
- 内容が不自然ではないか
などをめぐって、相続人同士の対立が表面化することも多いのです。
ところが、公正証書遺言は検認が不要です。
これは、「すでに公証人が遺言の真実性を保証しているから」です。
つまり、司法の入り口の段階で、すでに本物であることが担保されている遺言なのです。
それでも「無効」になる可能性はゼロではない?
ここまでお読みいただくと、「では、公正証書遺言は絶対に無効にならないのか?」という疑問が浮かぶかもしれません。
結論としては、理論上は“無効になる可能性はゼロではない”が、実務上は極めて稀です。
例えば、
- 詐欺や強迫が立証された場合
- 公証人の手続きに重大な違法があった場合
など、よほど事情がない限り、無効になることはありません。
実際、相続実務の現場では、
「自筆証書遺言が無効になるケース」はありますが、「公正証書遺言が無効になるケース」は、何年に一度あるかどうか、というレベルです。
公正証書遺言は「法的に最も安全な遺言」
ここまでの内容をまとめると、公正証書遺言が無効になりにくい理由は、次の5つに集約されます。
1. 公証人が法律に適合した文章を作成する
2. 本人の判断能力が厳格に確認される
3. 証人2人の立ち会いがある
4. 原本が公証役場に保管される
5. 検認が不要で、公的に真正性が担保されている
これらすべてがそろっているからこそ、公正証書遺言は「最も無効になりにくく、最も確実な遺言」と言われているのです。
まとめ:遺言で本当に守れるのは「想い」と「家族の関係」
遺言は、単なる財産分配の指示書ではありません。
それは、
誰に
何を
どんな気持ちで残すか
という、人生最後の意思表示でもあります。
せっかく残した想いが、
「形式ミスで無効」「解釈違いでもめる」
という結果になってしまったら、あまりにも悔しいですよね。
だからこそ、確実に通用する遺言を選ぶことが、本当の意味で家族を守ることにつながるのだと、私は日々の実務を通して実感しています。
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