【行政書士が解説】公正証書遺言が「向いている人・向いていない人」─あなたはどちらのタイプ?

「遺言書を作るなら、公正証書遺言が安心だと聞きますが、私にも本当に必要なんでしょうか?」
遺言のご相談をお受けしていると、こうしたご質問をとてもよくいただきます。
確かに、公正証書遺言はもっとも確実で安全な遺言”といわれています。
しかし一方で、すべての人にとって必ずしも最適な方法とは限らないのも事実です。
この記事では、行政書士として数多くの遺言・相続に関わってきた立場から、
公正証書遺言が 特に向いている人
事情によっては 向いていない人
を、できるだけ具体的に、わかりやすく解説します。
「自分はどちらのタイプなのか」を考えながらお読みいただければと思います。
よろしければ、過去の記事も併せてご覧ください。

そもそも、公正証書遺言とはどんな遺言?
まず簡単におさらいしておきましょう。
公正証書遺言とは
- 公証役場で
- 公証人(法律の専門家)が
- 本人の意思をもとに作成し
- 証人2名が立ち会って完成させる
- 法的にもっとも安全性が高い
遺言書です。
原本は公証役場で厳重に保管されるため、
【メリット】
- 紛失しない
- 偽造・改ざんされない
- 形式不備による無効がほぼない
- 家庭裁判所の検認が不要
といった、非常に大きなメリットがあります。
一方で、
【デメリット】
- 作成には数万円〜十数万円程度の費用がかかる
- 誰にも知られずにこっそり作る、というわけにはいかない
だからこそ、「向き・不向き」がはっきり分かれる遺言でもあるのです。
公正証書遺言が「特に向いている人」
ここからは、実務の現場で「このタイプの方は、公正証書遺言がとても向いている」と感じる代表的なケースをご紹介します。
① 不動産を持っている人
公正証書遺言が向いている人の代表例が、不動産を持っている方です。
- 自宅の土地・建物
- 親から相続した実家
- アパート、駐車場などの収益不動産
不動産は、
- 分けにくい
- 金額が大きい
- 相続トラブルの原因になりやすい
という特徴があります。
自筆の遺言では、
書き方が曖昧で、どの不動産かわからない
登記簿と表記が違っていて、無効になる
といったリスクが常につきまといます。
公正証書遺言であれば、登記簿どおりに正確な特定がされるため、将来、名義変更がスムーズに進みます。
② 再婚している人・前の配偶者との子がいる人
再婚家庭は、公正証書遺言が「ほぼ必須」と言ってもよいケースです。
今の配偶者、前の配偶者との間の子
それぞれの相続権の調整
これは、遺言がなければ、ほぼ確実に感情と法律が衝突します。
「今の妻にすべて残したい」「でも前妻との子の権利も無視できない」
このような微妙で複雑な調整は、法律のプロを介して作成する公正証書遺言でなければ、ほぼ対応できません。
③ おひとりさま・子どもがいない人
近年とても増えているのが、おひとりさま・子どもがいない方の遺言のご相談です。
このタイプの方に公正証書遺言が向いている理由は、
- 法定相続人が兄弟姉妹になる
- 兄弟姉妹が高齢で、手続きが進まない
- 相続人とほとんど交流がない
といった問題が起こりやすいからです。
「お世話になった人に財産を遺したい」「きょうだいには相続させたくない」
こうした希望は、遺言がなければ実現できません。
そして、その遺言を確実に実行するためには、公正証書遺言がもっとも安全なのです。
④ 相続人同士の仲があまり良くない人
これは、とても現実的な理由です。
- 兄弟姉妹が疎遠
- お金の話になると必ず揉める
- すでに過去の相続で争ったことがある
こうしたご家庭では、「遺言があってももめる」のではなく、「きちんとした遺言がないと、必ずもめる」という状態に近いです。
公正証書遺言には、
無効になりにくい
解釈が分かれにくい
検認手続きが不要
という特徴があり、相続人同士が感情的になる前に、法的に道筋をつけてしまう力があります。
⑤ 自分の意思を「確実に」実現したい人
次のような希望がある方は、公正証書遺言が非常に向いています。
- 特定の子に多めに残したい
- 内縁の配偶者に遺したい
- 孫に直接財産を渡したい
- 事業を特定の後継者に承継させたい
こうした内容は、遺留分の問題など、法律上の調整が必要になります。
自筆で書いた遺言では、
「希望どおりに書いたつもりが、実際には無効・トラブルだらけだった」
というケースも少なくありません。
公正証書遺言であれば、「実現できる内容」と「できない内容」を整理したうえで、もっとも安全な形で反映できます。
公正証書遺言が「必ずしも向いていない人」
一方で、状況によっては、
まだ公正証書遺言までは必要ない、まずは別の方法で十分ではないか
と判断されるケースもあります。
① 財産がほとんどなく、相続人がシンプルな人
例)
- 財産は預貯金だけ
- 相続人は配偶者と子だけ
- 家族関係も良好
このようなケースでは、正直なところ、公正証書遺言を作らなくても大きなトラブルになる可能性は低いです。
ご本人にとっても、
数万円〜十数万円の費用
公証役場に出向く手間
をかけるほどの必要性は、今すぐには感じられないかもしれません。
② まだ20代・30代で、状況が流動的な人
- 結婚するかどうかも未定
- 子どもができるかもわからない
- 財産もまだほとんどない
このような段階では、無理に公正証書遺言を作る必要はあまりありません。
むしろ、
エンディングノートで希望を書いておく
将来必要になったときに、あらためて検討する
このくらいのスタンスで十分なことも多いです。
③ とにかく費用をかけたくない人
公正証書遺言のもっとも現実的なデメリットは、やはり費用です。
公証人手数料、書類取得費用、専門家に依頼する場合のサポート費用・・・
どうしても、
「そこまでお金をかけたくない」「まずは自分でできる形で…」
と考える方もいらっしゃいます。
その場合、法務局の保管制度を利用した自筆証書遺言から始めるという選択肢も、決して間違いではありません。
「向いている・向いていない」は途中で変わる
とても大切なポイントとして、
今は公正証書遺言が向いていなくても、将来は向いてくるというケースが非常に多いです。
例えば、
- 再婚した
- 親の不動産を相続した
- 子どもが独立した
- 自分の病気をきっかけに考え方が変わった
こうした出来事をきっかけに、
「やはり公正証書遺言にしておこう」と判断が変わる方は、決して少なくありません。
遺言は、一度作ったら一生そのまま、ではなく、人生の節目ごとに見直すものなのです。
まとめ:公正証書遺言は誰にでも必要ではない。でも。
ここまでの内容をまとめると、次のようになります。
公正証書遺言が特に向いている人
- 不動産を持っている人
- 再婚・前婚の子がいる人
- おひとりさま・子どもがいない人
- 相続人同士の関係に不安がある人
- 自分の意思を確実に実現したい人
いまは必ずしも必要ない人
- 財産が少なく、相続関係が単純な人
- 若くて、将来の状況がまだ固まっていない人
- まずは費用をかけずに考えたい人
ただし、私はいつもこうお伝えしています。
公正証書遺言は「ぜいたく品」ではありません。
本当に争いを防ぎたい人にとっては、もっとも現実的な備えです。
遺言は、「自分のため」だけでなく、「残される家族のため」に作るものでもあります。
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