公正証書遺言の作成の流れを完全解説─「何から始める?」が今日すべて分かる

「公正証書遺言が安心だということは分かったけれど、実際には“何から始めて、どう進んで、いつ完成するのか”が分からなくて…」

これは、初めて遺言を考え始めた方から、非常によくいただくご相談です。

公正証書遺言はたしかに、

無効になりにくく、紛失もなく、相続トラブルを防ぎやすい、最も安全性の高い遺言です。

しかし一方で、

  • 手続きは難しい?
  • 公証役場って何をするところ?
  • どれくらい時間がかかるの?
  • 費用はいつ払うの?

と、「流れ」が見えないことで、不安を感じてしまう方も少なくありません。

この記事では、行政書士として日々公正証書遺言のサポートに携わる立場から、

  • 公正証書遺言の作成の全体像
  • 最初の相談から完成までの具体的な流れ
  • 途中でつまずきやすいポイント
  • よくある誤解と注意点

を、初めての方でもイメージできるよう、順を追って完全解説します。

よろしければ、過去の記事も併せてご覧ください。


目次

そもそも「公正証書遺言」とは?

あらためて簡単に確認しておきましょう。

公正証書遺言とは、

  • 公証役場で
  • 公証人が
  • 本人の意思を確認しながら
  • 法的に確実な形式で作成する遺言書

です。

原本は公証役場に保管され、偽造・改ざん・紛失の心配がなく、原則として家庭裁判所の検認も不要です。


公正証書遺言の作成の流れ【全7ステップで完全解説】

ここから、実際の作成の流れを、相談から完成まで順番にご紹介します。


【STEP1】まずは「何を決めたいのか」を整理する

最初にして、もっとも大切なステップです。

いきなり公証役場に行く必要はありません。

まずは、ご自身の中で次のことを整理しておきましょう。

  • 誰に財産を残したいのか
  • 不動産・預貯金・有価証券など、財産の内容
  • 特別に配慮したい人はいるか
  • 子ども、配偶者、兄弟姉妹との関係
  • 内縁関係、再婚、認知などの事情の有無

ここが曖昧なままだと、途中で内容が何度も変わり、作成が長引いてしまう原因になります。

【STEP2】行政書士などの専門家に相談する(任意だが非常に重要)

公正証書遺言は、ご本人だけでも理論上は作れます。

しかし実務上は、専門家に相談した方が圧倒的に安全で、結果的にスムーズです。

専門家に相談することで、

  • 遺留分の問題
  • 法律的に実現できる内容か
  • 将来トラブルになりやすい書き方になっていないか
  • 公証人とのやり取りの代行

などを、事前にすべて整理できます。

「せっかく作ったのに、あとで揉める内容だった」という失敗を防げるのが、最大のメリットです。

【STEP3】必要書類を集める

公正証書遺言を作るために、主に次のような書類が必要になります。

  • ご本人の関係書類
  • 戸籍謄本
  • 印鑑登録証明書
  • 身分証明書(免許証など)
  • 財産に関する書類
  • 不動産の登記事項証明書
  • 固定資産評価証明書
  • 預貯金の通帳コピー
  • 有価証券の資料 など
  • 相続人に関する書類
  • 相続人全員分の戸籍謄本

これらの書類は、遺言の内容を正確にし、登記や解約手続きをスムーズに進めるために非常に重要です。

【STEP4】遺言書の「原案」を作成する

集まった情報と書類をもとに、

  • 誰に
  • どの財産を
  • どの割合で

相続させるのかを、法的に有効な文章として原案にまとめていきます。

この段階で、

  • 遺留分への配慮
  • 予備的遺言(万一、相続人が先に亡くなった場合)
  • 遺言執行者の指定

なども同時に検討していきます。

この「原案」が、公正証書遺言の土台になります。


【STEP5】公証人との事前調整

原案ができたら、その内容をもとに、

  • 文言に問題がないか
  • 法律的に実現可能か
  • 表現が曖昧になっていないか

などを、公証人がチェックします。

このやり取りは、

専門家が代理で行う場合

ご本人が直接やり取りする場合

がありますが、内容のすり合わせは必ず行われます。

この段階で修正が入ることも多く、完成にかなり近づきます。


【STEP6】証人2名を手配する

公正証書遺言には、必ず証人が2名必要です。

証人は、

  • 18歳以上
  • 推定相続人でないこと
  • 受遺者でないこと

などの条件があります。

ご親族は原則として証人になれないため、

専門家が手配する

信頼できる第三者に依頼する

のが一般的です。


【STEP7】公証役場で「作成当日」─いよいよ完成

すべての準備が整ったら、いよいよ公証役場で作成当日を迎えます。

当日の流れは次のとおりです。

1. 本人・証人2名が公証役場に集合

2. 公証人が遺言の内容を読み上げ

3. 本人が内容に間違いがないか確認

4. 本人・証人・公証人が署名押印

5. 公正証書遺言として正式に完成

所要時間は、30分〜1時間程度がほとんどです。


完成後、公正証書遺言はどう保管される?

公正証書遺言は、

原本:公証役場で保管

正本・謄本:ご本人や関係者が保管

という形になります。

原本は公証役場に保管されるため、

  • 紛失しない
  • 改ざんされない
  • 火災・災害でも失われにくい

という、非常に高い安全性が確保されます。


作成にかかる期間の目安は?

ご相談から完成までの期間は、

  • 早い方で:2〜3週間
  • 書類が多い場合:1〜2か月程度

が一般的な目安です。

相続関係や財産が複雑な場合には、さらに時間がかかることもあります。


費用はいつ、どのくらい必要?

費用は大きく分けて、

  • 公証人手数料
  • 書類取得費用
  • 専門家サポート費用

に分かれます。

公証人手数料は、財産額によって数万円〜十数万円程度が目安です。

これは公証役場で遺言作成当日に支払うことが一般的です。


よくある誤解と注意点

ここで、実務でとても多い誤解をご紹介します。

❌「公正証書遺言を作ったら、もう何も変更できない」

→ 何度でも作り直せます。新しい遺言が優先されます。


❌「高齢にならないと作れない」

→ 判断能力がしっかりしていれば、年齢制限はありません。


❌「家族に内緒で勝手に作れる」

→ 作れるが、証人2名が必要なため、完全な秘密は現実的に難しいです。


まとめ:公正証書遺言は「流れ」を知れば、決して難しくない

公正証書遺言は、

1. 内容を整理し

2. 書類を集め

3. 原案を作り

4. 公証人と調整し

5. 証人をそろえて

6. 公証役場で完成させる

という、明確なステップに沿って進みます。

一つひとつを順番に進めていけば、「思っていたよりずっとスムーズだった」と感じる方が非常に多いのが実際のところです。

遺言は、「特別な人のもの」ではありません。

大切な人に、きちんと想いを残すための“人生の整理”です。


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