【行政書士が解説】遺言内容はどこまで自由に決められる?―「やりたいこと」と「できること」の境界線

「遺言って、自分の財産なんだから、基本的には好きなように書いていいんですよね?」

これは、遺言のご相談で非常によくいただく質問です。

結論から言えば、遺言内容の自由度は、かなり高いのが事実です。

しかし一方で、

  • 法律上、必ず守らなければならないルール
  • 書いても「実現できない」内容
  • 書き方を間違えると、争いの火種になる内容

も、確かに存在します。

この記事では、行政書士として実際に遺言作成をサポートしてきた立場から、

  • 遺言で「自由に決められること」
  • 法律で制限されるポイント
  • よくある勘違い
  • 実務上おすすめできる書き方

を、できるだけ分かりやすく、具体例を交えながら解説します。


目次

遺言は「原則自由」─それが大前提

日本の民法では、遺言について「遺言自由の原則」が採用されています。

これはつまり、

  • 自分の財産を
  • 誰に・どのように・どれだけ残すか

原則として本人が自由に決めてよいという考え方です。

そのため、遺言では次のような内容も認められています。

  • 法定相続分とまったく違う分け方
  • 相続人の一部にだけ財産を残す
  • 相続人以外の第三者に財産を渡す
  • 特定の財産を、特定の人に指定する

「え、そんなことまでできるの?」

と思われるかもしれませんが、原則として可能です。


遺言で自由に決められる代表的な内容

まずは、遺言でどこまで決められるのか、実務でよく使われる内容から見ていきましょう。


① 誰に財産を渡すか(相続人・第三者)

遺言では、

配偶者、子、親、兄弟姉妹といった法定相続人だけでなく、

  • 内縁の配偶者
  • 甥・姪
  • 友人
  • お世話になった知人
  • 団体・法人

など、相続人でない人に財産を渡すこと(遺贈)も可能です。

「家族以外に残したい」という希望は、遺言がなければ実現できません。


② 財産の分け方(割合・指定・包括)

遺言では、財産の分け方も自由に決められます。

具体的には…

  • 長男に不動産をすべて相続させる
  • 次男には預貯金を多めに残す
  • 配偶者にすべての財産を相続させる
  • 財産の〇%ずつを分ける

など、法定相続分に従う必要はありません。


③ 特定の財産を指定すること

遺言では、

  • この土地は〇〇へ
  • この建物は△△へ
  • この口座は□□へ

というように、財産をピンポイントで指定することができます。

不動産が多い方や、「この家はこの人に住んでほしい」という想いがある方には、とても重要なポイントです。


④ 遺言執行者を指定する

遺言では、

「この遺言を実行する人」

つまり 遺言執行者を指定することもできます。

遺言執行者を決めておくことで、

  • 相続手続きがスムーズになる
  • 相続人同士の話し合いが不要になる
  • 感情的な対立を防ぎやすい

という大きなメリットがあります。


⑤ 付言事項(気持ちや想いを書く)

遺言書には、

法的効力はないけれど、気持ちを伝える文章を書くこともできます。

これを「付言事項」といいます。

たとえば、

  • なぜこの分け方にしたのか
  • 家族への感謝
  • 争わず仲良くしてほしいという願い

こうした言葉があるだけで、相続後のトラブルが大きく減るケースは少なくありません。


では、遺言の「自由」が制限されるのはどこ?

ここからが重要です。

遺言は原則自由ですが、まったく制限がないわけではありません。


制限①:遺留分(いりゅうぶん)

もっとも重要な制限が、遺留分です。

遺留分とは、「一定の相続人に、法律上、最低限保障されている取り分」のことです。

遺留分があるのは、

  • 配偶者

※兄弟姉妹には遺留分はありません。


【遺留分を無視するとどうなる?】

遺言で、

「すべての財産を第三者に渡す」と書いても、

遺留分を持つ相続人がいれば、後から請求される可能性があります。

これを遺留分侵害額請求といいます。

遺言自体が無効になるわけではありませんが、結果的に思い通りにならないケースが多いのです。


制限②:法律で決められた形式を守る必要がある

内容がどんなに良くても、

  • 方式が間違っている
  • 法律で決められた形式を守っていない

場合、その遺言は 無効になります。


たとえば、

  • 日付がない
  • 署名がない
  • 自筆証書遺言でパソコン作成

などは、典型的な無効原因です。


制限③:書いても「実現できない内容」

遺言には、

書いても法的に実現できないこともあります。


たとえば、

  • 「長男は次男と絶対に連絡を取ること」
  • 「再婚したら相続させない」
  • 「家族はこの家に住み続けることを義務とする」

これらは、人の行動や感情を強制する内容であり、法的拘束力はありません。


実務で本当に多い「勘違い」と失敗例

ここで、実際の相談現場で多いケースをご紹介します。


❌ ケース①:自由に書いたつもりが、遺留分トラブルに

「すべてを内縁の妻に」と遺言を書いたが、

子どもから遺留分請求。

→ 結果的に、

→ 内縁の妻は想定より大幅に少ない取得に。


❌ ケース②:気持ちを書きすぎて、内容が曖昧に

「みんな仲良く分けてほしい」

→ 法的には具体性がなく、

→ 遺産分割協議が必要に。


❌ ケース③:条件付き遺言を書いたが無効扱い

「同居するなら相続させる」

→ 条件の解釈を巡って争いに。


自由に書くためにこそ「専門家の視点」が必要

遺言は、自由に書けるからこそ書き方一つで結果が大きく変わります。

  • 遺留分をどう調整するか
  • トラブルを防ぐ表現にするか
  • あえて書かないほうがいい内容は何か

こうした点を、事前に整理することが非常に重要です。


まとめ:遺言内容は自由だが、何でもありではない

最後に、ポイントを整理します。


✔ 遺言は原則、自由に決められる

→誰に、どの財産を、どの割合で渡すかは自由。

✔ ただし、遺留分という重要な制限がある

→無視すると、後から争いになる可能性。

✔ 書いても効力がない内容もある

→感情や行動を縛る内容は要注意。

✔ 自由に書くためには、正しい知識が必要

→思い通りの結果にするには、事前の設計が不可欠。


遺言は、「制限があるから難しい」のではなく、

自由だからこそ、慎重さが求められるものです。

大切な想いを、きちんと“実現できる形”で残すために、一度立ち止まって、内容を整理してみてください。


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