【行政書士が解説】遺言の書き直し・変更はどうやってする?―「一度書いたら終わり」ではありません

「遺言って、一度作ったらもう変更できないんですよね?」

これは、遺言のご相談でとても多く聞かれる質問です。

ですが、結論から言えば

遺言は、何度でも書き直し・変更ができます。

むしろ、人生の節目ごとに見直すことが前提の書類だと言っても過言ではありません。

  • 家族構成が変わった
  • 財産内容が変わった
  • 気持ちが変わった
  • 以前の遺言が今の状況に合わなくなった

こうした変化があれば、遺言を書き直すのは、ごく自然なことです。

この記事では、行政書士の立場から、

  • 遺言はいつ・どんな理由で見直すべきか
  • 書き直し・変更の正しい方法
  • やってはいけない「危険な直し方」
  • 公正証書遺言と自筆証書遺言の違い

を、実務でよくあるケースを交えながら解説します。


目次

遺言は「最新のもの」が優先される

まず大前提として知っておいていただきたいのが、遺言には次の原則があります。

有効な遺言が複数ある場合

内容が矛盾する部分については、もっとも新しい日付の遺言が優先される

古い遺言があっても、新しい遺言を正しい方式で作成すれば

新しい内容が有効になります。

このため、「前の遺言を無効にする手続き」を特別にしなくても、書き直しは可能です。


遺言を書き直すべきタイミングとは?

では、どんなときに遺言の見直しが必要なのでしょうか。

実務で特に多いのは、次のようなケースです。


① 家族構成が変わったとき

  • 結婚した
  • 離婚した
  • 再婚した
  • 子どもや孫が生まれた
  • 相続人が亡くなった

こうした変化があると、以前の遺言内容が現状に合わなくなることが多々あります。

特に再婚・離婚は、遺言を見直さないままだと思わぬ相続トラブルにつながりやすいポイントです。


② 財産の内容が変わったとき

  • 不動産を売却・購入した
  • 預貯金が大きく増減した
  • 事業を始めた・やめた

遺言で「特定の財産」を指定している場合、

その財産がなくなっていると、その部分の遺言は意味を失います。


③ 気持ち・考え方が変わったとき

遺言は、その人の「人生観」や「家族への想い」が色濃く反映される書類です。

時間が経つにつれて、

  • 考え方が変わった
  • 人間関係が変わった
  • 以前の判断に違和感を覚えるようになった

ということは、決して珍しくありません。

「気持ちが変わった」という理由だけでも、遺言を書き直すことは十分に正当です。


遺言の書き直し・変更の基本ルール

では、実際に遺言を変更したい場合、どうすればよいのでしょうか。


原則:新しい遺言を作成する

遺言の変更方法として、もっとも安全で確実なのは「新しく遺言を作り直す」ことです。

  • 内容を修正した遺言を
  • 法律で定められた方式で
  • 新しい日付で作成する

これだけで、古い遺言より新しい遺言が優先されます。


古い遺言は「破棄しなくても」よい?

よくある質問が、

「前の遺言は、破り捨てた方がいいですか?」というものです。

結論としては、

破棄しなくても、新しい遺言が有効なら、法的には問題ありません。

ただし実務上は、混乱を防ぐために、

  • 古い自筆証書遺言は回収・破棄
  • 公正証書遺言の場合は、新しい作成を明確に

しておくことをおすすめしています。


自筆証書遺言の「危険な直し方」

ここで特に注意していただきたいのが、自筆証書遺言の書き直し・訂正方法です。


❌ 二重線で消して書き直すのは危険

よくあるのが、

  • 文字を二重線で消す
  • 上から書き足す
  • 余白に追記する

といった方法です。


自筆証書遺言では、訂正方法が民法で厳格に決められています。

  • 訂正箇所を明示
  • 変更した旨を記載
  • 署名・押印

これらを守らないと、その訂正部分が無効になる可能性があります。


❌ 日付を書き直すのはNG

日付は、遺言の有効性を左右する重要な要素です。

日付を後から書き直すと、遺言全体が無効と判断されることもあります。


✔ 安全なのは「新しく書き直す」こと

結論として、自筆証書遺言は、その場で直そうとせず、

必ず新しい遺言を書き直す

これが、もっとも安全な方法です。


公正証書遺言の場合の変更方法

公正証書遺言も、もちろん書き直し・変更が可能です。


公正証書遺言は「作り直し」が基本

公正証書遺言の場合、

  • 一部だけを書き換える
  • 修正依頼を出す

といったことはできません。

変更したい場合は、新たに公正証書遺言を作成することになります。


【費用はまたかかる?】

新しく作成するため、公証役場の手数料は再度必要になります。

ただし、

  • 内容が簡素
  • 財産額が変わらない

場合は、初回より負担が軽くなることもあります。


「変更したつもり」が一番危ない

実務で一番怖いのは、

本人は変更したつもり

でも、法的には変更できていない

というケースです。


例①:メモを書いただけ

「前の遺言は取り消します」とメモ用紙に書いて保管。

→ 遺言の方式を満たしていないため無効。


例②:家族に口頭で伝えただけ

「前の遺言と違うからね」と説明。

→ 口約束は一切効力なし。


例③:コピーに修正を書いた

原本ではなくコピーに加筆。

→ 原本が優先される。


行政書士が考える「見直しやすい遺言」の作り方

遺言は、一生に一度きりのものではありません。

だからこそ、

  • 変更しやすい構成
  • 無理のない内容
  • 将来の変化を見越した設計

が重要です。

実務では、

  • 遺言執行者を指定する
  • 付言事項で気持ちを補足する
  • 定期的な見直しを前提にする

こうした工夫を取り入れることで、「書き直しが必要になったとき」もスムーズに対応できます。


まとめ:遺言は人生に合わせて更新するもの

最後に、ポイントを整理します。


✔ 遺言は何度でも書き直し・変更できる

→最新の有効な遺言が優先されます。

✔ 安全なのは「新しい遺言を作成する」方法

→中途半端な修正は危険。

✔ 自筆証書遺言の訂正は特に要注意

→方式違反で無効になりやすい。

✔ 公正証書遺言も作り直しが必要

→変更=新規作成と考える。


遺言は、「一度書いたら終わり」の書類ではありません。

人生の変化に合わせて、何度でも整え直してよいものです。

大切なのは、

「今の自分の想い」が、きちんと法的に実現される形になっているか。

その確認こそが、遺言を見直す最大の意味だと言えるでしょう。


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